だるまさん・顔遊び歌(仁多郡奥出雲町林原)

語り(歌い)手・伝承者:田中マサノさん・大正元年生)

だるまさん だるまさん
にらめっこしましょ
笑ってはだめよ 一二三

(収録日 平成7年6月31日)

解説

 柳原書店発行の「日本わらべ歌全集」の分類で手遊び歌としているが、さらに細かくは「顔遊び」とされている。
 任意の相手とお互いに向かい合って、手で自分の顔を歪めたりなど、おかしい顔にして、相手を笑わせる遊びのおりにうたわれている。どなたも幼かった時分、この遊びをした経験をお持ちのことと思う。
 この類歌の起源は江戸時代までは遡られるようで、天保初年ごろ(1830年)に出された高橋仙果著『熱田手毬歌』に次のように出ていた。

あアがりめ さがりめ
くるりとまはつて
さるの目(又、だるまの目ともいふ。)

 ところで、同じ町内でも詞章は微妙に違うようで、田中さんは林原地区にお住まいであるが、前布施地区の植田アサノさん(明治元年生)は、次のように終わりのところが少し変わっていた。

だるまさん だるまさん
にらめっこしましょ
笑っちゃだめよ
うんとこどっこいしょ

 また、石見に行って、大田市三瓶町野城では、

だるまさん だるまさん
にらめっこしましょ
笑ろたら負けよ
アップップ(水滝佑子さん・平成27年生)

これまた終わりが少しずつ違っている。隠岐地方のものも紹介したいと思うのだが、残念ながらわたしの収録したものには見つからない。
 ところで、鳥取県の場合はどうなのだろうか。
 まず東部の八頭郡八頭町宮谷で、

だるまさん だるまさん
にらめっこしましょ
笑ったらだめよ
アップップ(小谷美恵子さん・昭和25年生)

 中部の東伯郡湯梨浜町原では、

だるまさん だるまさん
にらめっこしょういな
アップップ(尾崎すゑさん・明治32年生)

ここまでは、島根県のそれと同様に、終わりの部分に違いが認められるといってよいようだけれど、西部の西伯郡伯耆町久古では、もう少し途中から変わっていて、

だるまさん だるまさん
赤い鉢巻き
いたしましょう
笑ったらつめりましょう(西賀世智子さん・大正元年生)

このように「赤い鉢巻き」が登場しているのである。