そうだ そうだ・言葉遊び歌(江津市波積南)
語り(歌い)手・伝承者:嘉戸宗憲さん・昭和28年生)
そうだ そうだ
そうだ村の村長さんが
ソーダー飲んで
死んじゃったそうだ
葬式饅頭 うまいそうだ
(収録日 昭和35年10月2日)
解説
言葉遊びに属するこの歌は、だれかが「…そうだ」と言い終えたとたん、その言葉尻を捕まえて、この歌にしてはやし立てて楽しむものである。
子どもの世界にあっては、ちょっとしたことが、たちまちすてきな遊びの材料に変えられてしまう。
平成13年夏、江津市波積地区などで、ダムを造る前の民俗調査のさい、柳原ヒサコさん(昭和7年生)から、次の同類をうかがった。そして思い出したように手をたたきながらうたい出すものという説明もいただいている。
あっ そうだそうだ
そうだ村の村長さんが
ソーダー飲んで
死んだそうだ
そういう噂が
あったそうだ
葬式饅頭が
でっかいそうだ
そういう噂が
あったそうだ
そうだ そうだ
最初の歌をうたわれた嘉戸さんは波積南地区であり、柳原さんの方は近くの波積本郷地区にお住まいなのだが、後者の歌は、前者に比較すると少し長い。
類歌を比べてみると、「あっそうだ」という出だしは他では聞いたことはなく、「そうだ」で始まるものばかりであった。そのようなところから、嘉戸さんの歌の方がオーソドックスだといえるようだ。
ここらで鳥取県米子市富益町北口のものを挙げておく。
そうだー そうだー
そうだ村の村長さんが
ソーダ飲んで
死んだそうだ
葬式饅頭
やらなかったそうだ(松下幸子さん・昭和17年生)
また、倉吉市湊町では、
ソーダ屋の宗さんが
ソーダ飲んで
死んだんだそうだ
葬式饅頭 うまいそうだ(岡田逸子さん・大正6年生)
この倉吉市の歌であるが、普通、「村長さん」とするところを、「宗さん」と、言い換えている。この部分のところは、他では聞いたことがない。たいていは「村長さん」であるので、倉吉市の歌は少数派といえそうだ。
それはそれとして、いずれも似たり寄ったりの詞章を持ちながら、各地に同類が伝承されている。
ソーダとは、重炭酸ソーダのことでふくらし粉として使われているが、昔は珍しかったものであろう。子どもたちは、すかさずそれを巧みに取り入れて、このような言葉遊びの歌に仕立てたのである。