芋屋のおっつぁん・手遊び歌(松江市美保関町下宇部尾)
語り(歌い)手・伝承者:山本妙子さん(昭和38年生)
芋屋のおっつあん
芋くって はさんで
つめって まっ黒け
(収録日 昭和45年7月22日)
解説
手遊び歌は、歌の詞章に合わせながら動作をして楽しむものであり、似たような歌はあちこちでうたわれたようである。同じ美保関町下宇部尾地区の子どもたちから、昭和45年に聞いたものとして、次の二つの歌がある。
お寺の和尚さんが
芋くって ブップッ(仁宮百合子さん・昭和28年生)
詞章の意味については、説明するまでもなかろう。
お寺の照子さんは
豆まいて 芽が出て ふくらんで
花が咲いて ジャンケン ポン(仁宮百合子さん・昭和28年生)
「豆まいて」では、豆をまく格好をし、「芽が出て」では、頭の上に両手を合わせて伸ばし、芽が出る様子を示す。「ふくらんで」では、合わせた手をふくらませ、いかにも芽が生長しふくらんでゆくような感じにする。そして「花が咲いて」では、合わせた両手を広げて花が咲いた様子をするが、それからいきなりジャンケンになる。
こうなれば手遊びをしながら、いつの間にか最後はじゃんけん歌になっているのである。
鳥取県倉吉市でも、同類は次のようにうたわれていた。
お寺の花子さんが
カボチャの種を まきました
芽が出てふくらんで
花が咲いた
ジャンケン ポン(矢間省三さん・大正8年生)
このようなしだいで、子どもたちは常に柔軟に、遊びを展開している。こんなところに、子どものすばらしさが見られるのではなかろうか。
さらに松江市八束町波入では、次のような歌もあった。
二本道こーちょこちょ
たたいてつめって
だんだんあがって
こーちょこちょ (池内ゆみ子さん・昭和34年生)
これはジャンケン歌ではなく、脇の下などをくすぐり、相手を笑わす遊びの歌である。
ところで、出雲市大社町宇龍では「くまん蜂刺いた」の最後のところで、思い切り相手をつねる次の遊びの歌も存在している。
いちぶつ とんとん
煮豆が しょぼしょぼ
さんぼが三郎で
四豆が がおがお
六部が ちゅうちゅう
七おか マンがええ
八つぁん 米買い
くまん蜂 刺いた 刺いた(古山フジノさん・明治34年生)