だるまさん だるまさん・顔遊び歌(大田市大森町)

語り(歌い)手・伝承者:松原美代子さん(大正5年生)

だるまさん
だるまさん
にらみっこしましょ
笑うたら だめよ
一二三

(収録日 平成6年10月26日)

解説

 どなたも幼少のころ、この歌で遊んだ記憶がおありのことと思う。懸命になって相手を負かすべく、いろいろな顔の表情を作ってみて、思わず相手を吹き出させて大いに喝采したり、幼子を喜ばせるため、この遊びを演じ、その子を喜ばせたりした思い出は、どなたもお持ちのことではなかろうか。
ただ、この歌は、あまり種類は多くないようで、奥出雲町前布施でも次のようにうたわれている。

だるまさん
だるまさん
にらめっこしましょ
笑っちゃだめよ
うんとこどっこいしょ(植田アサノさん・大正元年生)

詞章はほとんど変わらない。ここには挙げておかなかったが、他によくあるものとして、最後が「…アップップ」となっているのも多い。
 鳥取県では、やや変わった歌が存在していた。まず、西伯郡伯耆町久古の歌。

だるまさん
だるまさん
赤い鉢巻きしましょう
笑ったら
つめりましょう
ホッッ(西賀世智子さん・明治45年生)

 次に倉吉市大立の歌。

いっしんしんや
だるまさん
だるまさん
にらみっこ
しましょ
笑ったらだめよ
アップッノプ(仲本明代さん・大正8年生)

 出だしの枕詞とでも言うべき「いっしんしんや」がちょっと目新しいようである。
 調べてみると、この遊びもかなり古くからあったらしい。
 資料を探しみても、具体的な歌の詞章は出てこないが、江戸時代の天保15年(1844年)、江戸の「万亭おう賀」述とある『幼稚(おさな)遊(あそび)昔(むかし)雛形(ひながた)』下の巻に「にらめくら」として、遊び方の解説が次のように記されている。
 |これは、ふたりさしむかひでにらみあひ、わらひだしたほうがまけなり。よくしんぼうして、まかしたら、かほへすみをつけてやるべし。|
 これで見ると、勝った方が、負けた方の顔に墨をぬることになっているわけで、女の子同士が正月に行う羽子板をついて遊び、負けた方が顔に墨をぬられるという、今日でも各地でよく行われている遊びに少し似たところがあったようである。ただ、この書には惜しいことに歌の詞章が掲載されていない。もしあれば、現在の歌とどこまで似ているかが分かったはずなのである。