わしが姉さん三人ござる・手まり歌(鹿足郡吉賀町田野原)

語り(歌い)手・伝承者:高田夢代さん・明治30年生)

わしが姉さんは
三人ござる
一人姉さんは
太鼓のじょんず
一人姉さんは
ちぢみのじょんず
一人姉さんは
板屋にござる
板で一番
伊達しょで二番
伊達の帯を買うて
丹波にくけて
くけめくけめに
七房(ふさ)さげて
しゃんと結んで
お寺に参って
お寺小僧さんに
抱きしゅめられて
お寺小僧さんや
おきゃれ
帯の手が切れた
帯の手の切れたの
つながれしょうが
縁の切れたの
つながれせまい
しゃかポンポン
そら百ついたポンポン

(収録日 昭和37年8月11日)

解説

 これは島根県石見地方の歌である。念のために千葉県の歌の後半部に似た部分があるので、両者をしっかり比較していただきたい。

わしが女房は
三人ござる、
一人姉さん
太鼓が上手、
一人姉さん
伊達者でござる、
五両で帯買うて
三両で絎けて、
絎目絎目に
七房さげて、
今年はじめて
花見に出たら、
寺の和尚さんに
抱きとめられて、
よしやれ放しゃれ、
帯きりゃさんな、
帯の切れたは
大事もないが、
縁のきれたは
結ばれぬ。

 出典は三省堂発行の北原白秋編『日本伝承童謡集成』第三巻 遊戯唄(上)の93~64ページである。

 いかがだろうか。両者を比較すれば、一目瞭然、基本的なモチーフが同一であることが理解できる。実際、関東と山陰にこのように似た歌が存在することを、どう考えればよいのだろうか。やはり昔の時代、見えないところで、庶民の間での交流がこうした結果を生んだのではないかと思われてしようがない。
 また、本県の石見地方では他でもこの類歌は、いくつか聞いている。いずれも「わしが姉さん三人ござる」で始まっており、それより前には、何の詞章もついていない。
 そうして考えると千葉県の歌の前半部(掲載は省略した)は、別な歌が後半部の歌の前につけ加えられたものと考える方が、自然であるように思われるのである。