じゃんけん ぽん・じゃんけん歌(大田市大森町)
語り(歌い)手・伝承者:岩根まつえさん・大正9年生
じゃんけん ぽん
あいこで しょ
しょっしょで しょ
また あいこ
しょっしょで しょ
(収録日 平成6年10月25日)
解説
どなたもご存じの鬼を決める歌である。明治時代以降に登場したのか、江戸時代などの文献には認められないようである。大森町の石見銀山近くで聞いたが、同じ地域でも人によっては、次のように後半部分が、もう少し変わっていた。
じゃんけん ぽん
あいこで しょち
しっけん わい
また あいこ(松原美代子さん・大正5年生)
ただ、鬼決め歌を「じゃんけん」という詞章で始めるのは、かなり広い範囲だったようで、雲南市木次町法印では次のようだった。
じゃんけん ぽい
あいこで しょ(内田 絹子さん・昭和15年生)
続いて鳥取県に移る。
日野郡日野町福長では、
じゃんけん ぽい
あいこでしょ
庄屋の子
米屋の子(沼田スミ子さん・大正元年生)
勝負のつかないときには「あいこでしょ」の後、
「庄屋の子」とやり、まだつかなければ、「米屋の子」となり、それでも決着しなければ、また初めの「じゃんけん、ぽい」に返るそうだ。
次には「じゃんけん」なる詞章のない歌を紹介しよう。まず松江市八束町波入の歌である。
がんりんぼ
あいこでほ ほい
ほい ほい…(池内重子さん・大正5年生)
次に鳥取県東部の鳥取市鹿野町大工町の歌。
いんじゃん ほい
じゃんけん ほい(竹部 はるさん・明治31年生)
とりあえず、この二例が見つかった。
ところで、わたしは松江市の北堀小学校を卒業しているが、第二次世界大戦直後ごろ、このじゃんけんを、「やっきっき」と言っていた。
石村春荘氏著『出雲のわらべ歌』にも、明治末までの松江地方の歌として、次のようにあった。
ヤツキツキ
ヤツキノ
キンタマ
促音を普通の大きさの活字で印刷してあるが、今日では、当然、小さく表記すべきであるから、これは「ヤッキッキ」と読むのである。