二月三月花盛り(江津市桜江町谷住郷)
語り(歌い)手・伝承者:森脇ケシノさん(明治43年生)
二月三月花盛り
鴬鳴いた春の日も
楽しいときも夢のうち
五月六月実がなれば
枝からふるい落とされて
近所の町へ持ち出され
何升何合はかり売り
もとより酸(す)っぱいこの身体
塩に漬かって辛くなり
シソに染まって赤くなる
七月八月暑いころ
三日三晩の土用干し
思えばつらいことばかり
これも世のため人のため
しわはよっても若い気で
小さい君らの仲間入り
運動会にもついて行く
まして戦(いくさ)のそのときは
なくてはならぬこのわたし
(収録日 平成2年8月)
解説
伝承者の森脇さんは、小学校の三年生ごろ国語の授業で習ったもので、その後、老人会などでもよくうたっているとうかがった。別な方の話では大正時代の教科書に出ていたとのことである。そういうことからか、この歌はけっこう人々に親しまれていたようで、以前はわらべ歌をお願いすると、この歌を教えてくださった方もたまにはおられたものである。そのうちの思い出の一つ、昭和三十六年夏、同県八束郡島根村(現在は島根町)野波で当時、小学校五年生の湯原百合子さんなどからお手玉歌として聞かせてもらった。ただ、この方は伝承されているうちに、詞章がいくつか転訛されていた。念のために挙げておくので、桜江町のものと比較していただきたい。
二月三月花盛り
鴬鳴いたら花の日の
楽しいときも夢のうち
五月六月実がなれば
枝から枝へ落とされて
近所の町へ持ち出され
何升何合はかり売り
もとより酸(し)っぱいこの身体
塩に漬かって赤くなる
七月八月暑いころ
三日三晩の土用干し
思えばつらいことばかり
それでも世のため人のため
しわはよっても若いとき
小さい君らの仲間入り
運動会にもつれて行く
まして戦(ゆくさ)のそのときは
なくてはならないこのわたし
古い時代の学校教科書に出ていた歌が、こうして伝承歌に転身しているのであった。
また、これ以外にも、学校で習った比較的新しい歌も、子供たちは遊びに自在に取り入れ、手まり歌などに転用している。以前、通りすがりに手まり歌として聞いた次の歌も、そんな仲間であった。
梅の小枝でウグイスは
春が来たよとうたいます
ホーホーホケキョ ホーホケキョ大きな袋を肩に掛け 大黒様が来かかると
ここに因幡の白兎 皮をむかれて赤はだか