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世の中にめでたいものは(松坂・松江市美保関町万原)

語り(歌い)手・伝承者:松江市美保関町 梅木一郎さん・1933年(昭和8年)生

世の中に めでたいものは芋の種
葉には金銀黄金の 露を受け
根には十二の子を栄え
孫子栄えて末繁盛

(収録日 1970年〈昭和45)7月23日)

解説

 この歌は婚礼後の祝宴とか、めでたい席でうたわれるもので一種の余興歌である。
祝いの席の歌であるので、そこでうたわれる歌の詞章も、縁起を担いでめでたい内容になっている。芋といえば、根元に多くの実をつけているところから、子孫繁栄を示し、葉に溜まる露も、光線のあたり具合によって、金銀黄金のように輝くことがあり、それを財宝になぞらえて、豊かになるよう願う気持ちを、そのようにうたい込んでいるのであろう。また「12」の数字は、1年が12ヶ月からなっていることを象徴しており、そこから一年中常にとの意味を象徴していると考えられる。
 ところで、この歌は県下一円で聞くことができるようである。そして似たようにしてうたわれているやはり松坂といわれる歌を、同じ美保関町の歌で紹介しておこう。
 まず次の歌は「高砂」の後に出すものとされている。

うれしめでたェー この盃は
鶴と亀との盃で
鶴は千年生きるもの
亀は万年生きるもの
この酒いただく
おん方は寿命長かれ 末繁盛
(美保関町 梅木一郎さん・1933年生)

 鶴とか亀は、もともと長寿であり、それだけに縁起の良い動物と見なされていることは、説明するまでもあるまい。同じような詞章ではあるものの、もう少し長い歌も次のように残されている。

盃の台の回りに 松植えて
上から鶴が 舞い下がり
下からは亀が はい上がり
鶴は千年生きるもの
亀は万年生きるもの
鶴と亀とのおん盃で
このご酒あがる
おん方は寿命長かれ 末繁盛
(同上)

次には婚礼の謡の後、お開きの盃のおりにうたわれるものである。

祝言の床前見れば
婿さんは 待つ(松)ばかり
嫁御は紅梅、梅の花
二親さんは高砂で
謡の文句は四海浪
静かに納まる床の間へ
(同上)

 まさに宴会の収めにふさわしい歌である。以前、婚礼もめいめいの家で行われたから、これらの歌はまさにその家の繁栄を祝福していたのである。