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お恵比寿が(お恵比寿さん・隠岐郡西ノ島町赤ノ江)

語り(歌い)手・伝承者:扇谷ゲンさん・1903年(明治36年)生

お恵比寿(えびす)が岩のヤーレ
木陰で昼寝する
アアコリャ
ジュンニコイ
ジュンニコイ
鯛をヤァレ釣るような
夢を見た コリャ
ジュンニコイ
※ ハアー 順に来い
アア 養子に来い
アア 養子に来るから
案ずるな
※印以下の囃しは、他の人たちでつける。

(収録日 1985年(昭和60)8月21日)

解説

 隠岐島は民謡が実に豊富である。それは島であるので各地より寄港する船の乗組員たちから仕入れた歌が、この地方でしっかりと根づいたところに理由があるのだろう。
 さて、ここに挙げた歌は行事歌になる。1月2日、日本海側で新潟県から西の漁民の間に見られ、船祝いとして宴会を行う「松直し」の行事や同十日の「十日恵比寿」のさいの宴会でうたわれている。福を招き寄せる願いを込めた縁起のよい内容である。この地方でいう恵比寿神は、豊かな海の幸をもたらす神として信仰されているので、やはり漁民の神である。「鯛を釣るような…」の詞章に漁業の神としてのイメージが示されている。この十日恵比須の日、若者たちが御輿を担ぎ、集落内を勢いよく練り歩く姿は、なかなか盛大で見事なものである。
歌い手の扇谷さんは、この他にもうたってくださったので、以下に紹介しておきたい。。

大黒は蔵の ヤーレ
木陰で昼寝する
アア コリャ
ジュンニコイ
ジュンニコイ
俵を ヤーレー
積むよな夢を見た
アア コリャ
ジュンニコイ
ハアー 順に来い
アア 養子に来い
アア 養子に来るから
案ずるな

ウグイスが梅の
ヤーレー小枝で昼寝する
アア コリャ
ジュンニコイ
ハアー ジュンニコイ
アア ジュンニコイ
アア 養子に来るから
案ずるな
ジュンニコイ
花の ヤーレー
咲くよな夢を見た
アア コリャ
ジュンニコイ

 大黒神は恵比寿神と一対で祭られ、「俵を積むような…」の詞章からも察せられるように、豊作をもたらす神であることはいうまでもない。よく民家の部屋の棚などに、この一対の神は祭られているのを見かける。
 梅とウグイスの取り合わせも知られているが、この鳥は「春告げ鳥」とされるところから、春を待ちこがれる人々の縁起を担いだ詞章と考えられるのであろう。