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うれしめでたの若松様は(歳徳神歌・松江市島根町瀬崎)

語り(歌い)手・伝承者:木村源之助さん・1963年(昭和38年)当時68歳

ア うれしめでたのナー
アラ ヨーホイ ヨーイ
若松様は
ヤートコシェー
ヤートコシェ
ヤー ハレワイシェー
コレワイシェー
ナー ハンデモーシェー
枝が栄えてナー アラ
ヨーホイー ヨーイ
ヨーイヤー 葉も茂る
ヤートコシェー
ヤートコシェー
ヤー ハレワイシェー
コレワイシェー
ナーハンデモーシェー

(収録日 1963年(昭和38)8月13日)

解説

 正月に歳徳神(さいとくじん)の納まった御輿(みこし)を担いで回る、いわゆる宮ねりのおり、この歌はうたわれる。出雲地方の神社の境内には、このような正月の神である歳徳神を宮倉に納めてあるところが多い。
 ここ島根半島に属する地方では、とりわけ年初の行事が多い。詳しいことは聞き漏らしたが、若者たちが集まって歳徳神を担いで集落を回り、人々はそのご利益に与(あずか)ろうとするのであろう。
 囃し詞を除いて基本形を示せば次のように、おなじみの近世民謡調であることが分かる。

うれしめでたの………7
若松様は………………7
枝が栄えて……………7
葉も茂る………………5

 歌の詞章については、もちろんこれ以外にもいろいろと縁起の良いものが用意されている。木村さんはこのとき以下の歌もうたってくださっている。囃し詞を除いて基本形を挙げておこう。

瀬崎よいとこ
朝日を受けて
お山嵐が
そよそよと

こちの親方
元から良いが
今は若世で
なお良かれ

 また、当地で歳徳神歌といわれているものの中でも、小正月のトンドのとき、一軒一軒家を回るおりにうたわれる歌もあった。同じ日に田中ステさん(八十一歳)が次のようにうたってくださった。

新竹寒竹
かやの竹
竹を三本筒抜いて
竹のおらぼに絵馬をつけ
絵馬のおらぼへ
さりをつけ
はりのおらぼに
エドかけて
吹き戸なんかい
はせ出いて
大黒三郎が共乗りで
恵比寿なんどが中乗りで
雄鯛雌鯛(おんだいめんだい)つくづくと
挙げて見たれば
ふみこ鯛
これほどめでたい
ことはない
あなたのお蔵に
納めましょ

 既に意味が不明になった部分もあるが、ともかく見事なものであった。