五葉めでたよ(馬子歌・松江市島根町多古)

語り(歌い)手・伝承者:小川 要さん(1923年・大正12年生)

五葉のナーア
めでたよナーア
若松様は
枝もナーア
栄えてヨー
葉も茂るナーエー

枝も栄えて
葉も茂るなら
命長かれ
末繁盛

( 昭和58年8月12日収録)

解説

 婚礼行列のさい、かつてうたわれていた馬子唄としてうたっていただいた。
 ここ島根町多古地区は、漁村として知られたところである。
 夏のさなかの夕方、たまたまマイカーで田舎道を走っていると、大漁を祝ってだろうか、にぎやかな宴席の声が聞こえてきたので、ちょうど民話やわらべ歌など、口承文芸を訪ねてあちこち回っていた筆者だったので、これ幸いと車を止め、録音機を持って、宴席の方へ進んで行くと、何人もの男性の方々が。開けっぱなしになった縁側に面した座敷で、酒盛りをしている様子であった。
 筆者はまだその頃は四十八歳であり、遠慮もなく顔を出して。大漁歌などを所望したところ、みなさんから歓迎され、いろいろな民謡をうたっていただいたのであった。
 座敷歌である「若松・六曲」「地搗き歌・六曲」そして「馬子歌・十四曲」、それにご当地名物の「安来節・四曲」、それに「大漁歌・六曲」「子守唄・二曲」など数えてみれば三十八曲もうたっていただいていた。みなさんは小川さんの歌に音頭を取り、なかなか見事なハーモニーを響かせてくださっていた、録音を聞いていただければ、そのことは簡単に理解いただけるであろう。
なお、詞章であるが、もちろん七七七五調であり、江戸時代に盛んに歌われていたスタイルである。合いの手である「ナーア」とか「ナーエー」を省いて音節数を数えれば、このことは一目瞭然である。次に音節を記しておく。

ごよのめでたよ……七
わかまつさまは……七
えだもさかえて……七
はもしげる…………五

えだもさかえて……七
はもしげるなら……七
いのちながかれ……七
すえはんじょ………五

 この「繁盛」であるが、うたわれる場合は「はんじょ」であり、「じょう」の部分の「う」は省略されて発音されない。また「じょ」は拗音なので、音節では一つと数えるから、全体で五音節になるわけである。