わたしゃ行きます(馬子歌・松江市美保関町万原)
語り(歌い)手・伝承者:梅木一郎さん(1933年・昭和8年生)
ハー わたしゃナー
行きますヨー
ハー みなさんさらば
長の ナーアー
お世話に ヨー
ハー なりました
ナーヨー
(昭和45年7月25日収録)
解説
これは結婚式に向かう嫁入り道中の歌である。昔はこのような歌を歌い手の上手な人をお願いして、嫁入りを行ったと聞いている。今回の歌い手の梅木さんは、録音のときが三十二歳であったのからか、実に声量豊かで見事なものだった。
ここに掲げた詞章以外に伺ったものを「遊び言葉」を略して紹介しておく。このほかに、
もはや行きます
親さんさらば
今度来るとき
客で来るさあさみなさん
見物なされ
花のつぼみが
今開く届け届けは末まで届け
末は鶴亀
五葉の松鶴が舞います
この家(や)の空で
この家繁盛と
舞い遊ぶどこかどこかと
尋ねて来たら
向こう白壁
殿の宅新造作りて
八帆(やほ)までかけて
思う湊に
とろとろと門松ばかりが
松ではないが
嫁御待つのも
門に待つ今日は日も良し
天気もよいし
結び合わせて
縁となる箪笥長持ち
葛籠の荷物
今宵貴方に差し上げる
(別に「背戸の蔵へと納めます」とも)蝶よ花よと
育てた娘
今宵こうして
もらったからにゃ
これがこの家の新柱蝶よ花よと
育てた娘
今宵貴方に差し上げる
(別に「酒や肴でもらいます」とも)
せっかくの機会なので、うかがったものを、一通りあげておいた。