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夏の暑いのに草取るよりは(草取り歌・浜田市三隅町古湊)

語り(歌い)手・伝承者:山根俊子さん(1920年・大正9年生)

夏の暑いのに
草取るよりは
草取るよりは
だらずヤレ病みをして
寝るがよい

そうじゃ寝るがよい
だらず病みをして
寝るがよいが
ひとちゃ身のため
君のため

そうじゃ君のため
ひとちゃ身のため
君のため

三次(みよし)三次と
どこがようて三次
どこがようて三次
三次ゃ山のこうで
川ばかり

そうじゃ川ばかり
三次ゃ山のこうで
川ばかり

三次や五万石
さらし野なれぞ
さらし野なれぞ
せめてやめましょ
門立ちを

そうじゃ門立ちを
せめてやめましょ
門立ちを

(昭和35年5月12日収録)

解説

 田の草を取るときの作業歌である。
 滝のように汗が出て来るのも厭わず、草取りをしなければ、稲の実りは望めない。
 だれかが歌い出すと、自然に歌となって、うたいながら作業は進むのである。
 メロデイを聞いてみると、意外にテンポがゆるやかであるのに驚かされる。実際に厳しい作業なので、テンポが急なのは、かえって作業がはかどらなくなるのかもしれない。
 また、同じ詞章の繰り返しが見られるのも、この草取り歌の特徴のようである。音節数を見てみると、初めの部分は、次のようになっている。

なつのあついのに……八
くさとるよりは………七
くさとるよりは………七
だらずやみをして……八
ねるがよい……………五

次の部分は、

そうじゃねるがよい…八
だらずやみをして……八
ねるがよい……………五
ひとちゃみのため……七
きみのため……………五

 初めのは八七七八五、次のは八八五七五であり、いわゆる近世民謡調の七七七五スタイルを基本としながらも、その字余りであり、一フレーズ多いところに、特徴があるようである。作業歌ではあっても、近世民謡調の影響下にあるのだろうか。