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切れた切れたと 木挽き歌・江津市桜江町谷住郷)

語り(歌い)手・伝承者:今谷太郎一さん(1900年・明治33年生)

ヤーレ切れた 切れたと
上向きばかり
水にゃ浮き草
根は切れぬ
チャリンコ バッサリ
キクザキ マイゾヨ

(昭和35年8月16日収録)

解説

 木挽きの仕事は、木を相手に行う退屈さとも相まって、作業歌の中味は、多様なものだったようだ。
 この今谷さんの元気いっぱいの声を聞いていると、筆者も当時は二十五歳の若さで、多くの方々から録音させていただいたのであったが、録音機そのものも、現在のように手元にあるものではなかったからか、録音して自分の声を聞いてみると、まるでラジオから流れるような気持ちになって、喜んで次々思い出してはうたったり話したりしてくださったものである。
 この今谷さんの木挽き歌を遊び言葉などを省いてみると、

きれたきれたと……七
うわむきばかり……七
みずにうきぐさ……七
ねはきれぬ…………五

 七七七五の近世民謡調であることが判る。そして内容は、世間的によくあるような男女間の微妙な姿が、垣間見られて、なるほどと頷けるから面白い。
 だれが作り出したのか作者不明の伝承歌であるだけに、庶民の思いを巧みに歌い込んだ技量に感心させられる。
 さて、木挽き歌としてよく聞いた詞章として。思い出すものをあげておく。

木挽き女房に
なるなや妹
木挽きゃ息をひく
はよ死ぬる

妹行くなよ
木挽きさんの女房にゃ
木挽きゃ息をひく
はよ死ぬる

木挽きさんたちゃ
米の飯ょを食べて
木挽きゃ息をひく
はよ死ぬる

木挽き 木挽きと
名はよいけれど
木挽きゃ息をひく
はよ死ぬる

木挽き 木挽きと
大飯食ろうて
松の根切りで
よろぼえる

 いずれも厳しい内容であるが、中には木挽きの心意気をうった次のものもあったのである。

木挽き 木挽きと
馬鹿にはめすな
小判並べて
女郎も買う