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明けてめでたい元日の朝は(相撲取り節・隠岐郡隠岐の島町=旧五箇村山田)

語り(歌い)手・伝承者:勝部タケさん(1898年・明治31年生)

ハアー 明けてめでたい 元日の朝はョー
若水迎えに出たときに
橋の欄干に腰を掛け
はるか川上眺むれば
白いカモメが三つ連れで
また三つ連れで 六つ連れで
翼(はがえ)帆にして身を船に
大判小判をうわえ寄しぇ
これが館(やかた)へ舞い込んで
これのおん家の御床(おんとこ)の
床の欄間に巣をかける
十二の卵を産みそろえ
それが一度に目を開けて
この家は御繁盛と コラヤノヤーイ 歌(おた)て発つヨー
(注)節をつけずに詞章だけをうかがったら、ここの部分は「この家は御繁盛と末繁盛」と話された。

(昭和60年8月20日収録)

解説

 この相撲取り節をうかがったのも島根県民謡調査のおりであった。歌い手の勝部タケさんからは、この他にも草取り歌、田植え歌、七夕の歌、盆踊り歌をうかがった。実に多くの歌をご存知の方だった。
 この相撲取り歌の詞章を眺めると、若水迎えに出たところ、縁起のよい白いカモメが聖数である三羽連れだって飛んで来て、しかもそれぞれ大判や小判をくわえており、そのカモメたちが家の中へ舞い込んで、床の間に巣をかけ、十二の卵を産むという風景である。十二という数は十二ヶ月、つまり一年を象徴しており、この家では一年間、無事息災を約束されているのである。実に目出度い内容となっている。
 相撲取り節は、このように縁起のよい詞章で作られているのである。