わたしゃ貴方に(石臼挽き歌・仁多郡奥出雲町上阿井)
語り(歌い)手・伝承者:荒木トミさん・1968年(昭和38)8月9日当時83歳
わたしゃ貴方に
惚れたが病
他に病は梨の花
( 収録日 1968年(昭和38)8月9)
解説
石臼挽きの歌のことを、当地では「いししふきのうた」と称している。これは出雲地方で一般的に言っているようである。今では行われなくなったようであるが、昔は各家庭で夜なべ仕事に石臼で米の粉を挽いていたのであり、その作業の際にうたわれていた労作歌がこれである。
この内容は女性の恋歌であることは、詞章を見れば分かる。同じ荒木さんからは、このとき次の歌もうたってくださった。
石臼(いしし)挽け挽け
団子して食わしょぞ
芋(いも)に蕪菜(かぶな)を
切り混ぜてわしとおまえさんは
開けずの箱だ
仲の良いのは
人知らぬ
食生活の厳しさや人情の機敏さがうたわれているのである。