餅を搗くなら(餅つき歌・浜田市三隅町森溝)

語り(歌い)手・伝承者:金谷ナツさん・1888年(明治21年生)当時72歳

餅を搗くなら
一石どまつきゃれ
二斗や三斗はだれもつく

(収録日 1960年〈昭和35)10月3日)

解説

 正月餅など縁起のよい餅を搗くときには、石見地方では、このような餅つき歌がうたわれていた。
 このほかにも次のような詞章も見られたのである。いずれも縁起のよい内容をうたったものばかりである。

庭じゃ餅をつく
面じゃちぎる
奥の四畳の間じゃ金量る

旦那大黒
お内儀さんは恵比寿
一人ある子は福の神

 筆者はこの労作歌をうかがったときは、当時の那賀郡三隅町立三隅中学校(現在は浜田市立三隅中学校)に勤めており、言語伝承を採録し始めたところであった。歌い手の金谷ナツさんは美声の持ち主で、筆者の求めに応じて、おしげもなくろくおんさせてくださったものである。今思い出しても懐かしい限りである。