蛍、蛍、こっち来いポッポ(動物の歌)

語り(歌い)手・伝承者:大田市川合町吉永 酒本安吉さん・明治17年生

蛍 蛍 こっち来い ポッポ
あっちの水(みざぁ) 苦いけえ こっちの水(みずぁ) 甘いけえ
こっち来い ポッポ

(昭和36年7月収録)

解説

 全国的なのは、「ほーほー蛍来い」で始まり、「こっちの水は甘いぞ…」までと最後は再び「ほーほー蛍来い」で収めるスタイルであろう。
 ところが、この歌はやや独特である。いろいろな地方を言語伝承を求めて歩いていて、このように独自な伝承に出会うと、何か宝物でも見つけたような喜びを覚える。
 さて、それでは類歌の特徴あるものを紹介しよう。まず鳥取県のものから。鳥取市佐治村尾際では、

ほ ほ 蛍来い 蛍来い 小さな提灯さげて来い
ほ ほ 蛍来い 蛍来い
あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ
ほ ほ 蛍来い 蛍来い(福安初子さん・大正4年生)

 小さな提灯さげて来い」と蛍の明かりのたとえに特徴がある。
 東伯郡湯梨浜町原では、

蛍来い 山道来い
ランプの光で みんな来い(尾崎すゑさん・明治32年生)

 短く引き締まった詞章に特色がある。次に島根県のもの。江津市桜江町渡で、

ほー ほー 蛍来い
あっちの水ぁ苦いぞ こっちの水ぁ甘いぞ
貝殻持てこいブウ飲ましょ(門田ヤスエさん・大正8年生)

 「貝殻持てこいブウ飲ましょ」は素朴であろう。
 この大田市のものも「…ポッポ」がおもしろい。