カッポさん出てこい(動物の歌)

語り(歌い)手・伝承者:大田市三瓶町野城・大谷アエさん・大正5年生

カッポさん 出て来い 出て来い
カッポさん 出て来い 出て来い

(昭和63年1月収録)

解説

 カッポさんはウスバカゲロウの幼虫の名前。それを掘り出すさいにうたわれる歌である。大田市と同じカッポさんは、出雲部の雲南市飯南町八神でも次のようにして存在していた。

カッポ カッポ 出て来い
甘い水を飲ましょ(升本朝子さん・明治38年生)

 これになると「甘い水を飲ましょ」のところから、蛍の歌を連想させるものがある。
 また、江津市波積町南では、よく似た「キッポさん、ジッポさん」とか「ジッポさん」と称している。同地出身で同市桜江町谷住郷にお住まいの本山ハルエさん(昭和23年生)から、次のように教えていただいた。

ジッポさん ジッポさん
はよ目に当たれ
わしが目に当たれ

子どもらしくストレートに「わしが目に当たれ」と、その願望をうたいあげている。
邑智郡邑南町日和では、浜田市三隅町同様、この虫のことを「コンゴ」と呼んでいる。

コンゴ コンゴ 田ぁ掘れ
蓑(みの)笠買うちゃろう(江津市桜江町渡在住・門田ヤスエさん・大正8年生・邑智郡邑南町日和出身)

 ここらで再び出雲部に舞台を移そう。少し変わったところでは、名称が「テテッポさん、カカッポさん」であろうか。雲南市木次町大原のものである。

テテッポさん カカッポさん
水汲みに行くかね(山本百合子さん・大正14年生)

 オーソドックスなところでは、松江市玉湯町下大谷で、

コモコモさん コモコモさん
出てごさっしゃい(春木 務さん・明治44年生)

とうたわれているのが、それであろうか。
  いずれにしても、ウスバカゲロウの幼虫の固有な所作を、人間のそれと置きかえて、子どもたちは詞章を創作しているのである。