和尚と三人小僧

語り(歌い)手・伝承者:東伯郡三朝町大谷  山口忠光さん・明治40年(1907)生

 昔あるお寺に和尚と小僧が、そこにゃあ三人おった。そいで毎日毎日暮らしておるうちに、ある檀家から仏さんに供えてくれっていうので、梨を持ってきて供えたんだ。
 そいで、和尚が、
「さあ、仏さんに梨を供えてもらったから、みんなでいただこう」っていうので、なんぼうあったか知らんが、和尚以下みんなが一つずついただいて、まあ、次から次へいただきよって最後に一つ残った。さあ、残ったところを和尚さんが、
「さあ、これを一つ、みんなで切って分けて食やあ一番ええことだけど、切ってもええし切らぁでもええし、まあ、どっちでもええが、まあ、とにかくこれになったら、上手な歌を詠んだもんが褒美にやるということにわしがしょう。それで小僧、おまえらちも歌を考えてみい」って。
「それでその歌に一つ条件がある。切って食いたぁもあるし、切られもせんし、だから・切りたくもあり切りたくもなし・ちゅうとこを下の句へつけて、それで歌を作れ」言った。
「は-いっ」ていうので、一番真っ先の小僧が、

  十五夜の庭に影さす松の枝 切りたくもあり切りたくもなし

「う-ん」。から、次の小僧が、

  硯箱かけごに余る筆の軸 切りたくもあり切りたくもなし

って。最後の小僧が、

  梨一つ惜しむ和尚の細首を 切りたくもあり切りたくもなし

って、
「このばか者」言って、和尚がその弟子に、一番しまいに詠んだ弟子にぶつけたって。で、それが、
「はい、ありがとうございます」ていただいたって。そういう話。昔こっぽり。

解説

 うかがったのは昭和63年(1988)8月25日であった。昔話の中の笑話に属する。関 敬吾『日本昔話大成』の「巧智譚」に「和尚と小僧」の話がいろいろ出ているが、この中には、害とする話型としては登録されていない。しかし、内容から見てこの項目に入れるのにふさわしい話だと思われる。