ねんねんころりや・子守歌(隠岐郡隠岐の島町山田)
語り(歌い)手・伝承者:長谷川美代子さん大正9年生
ねんねんころりや おころりや
坊やはよい子だねんねしな
坊やが寝たまに餅ついて
べんべの子に負わして
子ども衆(しょ) 子ども衆 花取り行くまいか
花はどこ花 都花
一枝折っては ばんとだち
二枝折っては ばんとだち
三枝の先で 日が暮れて
宿を取ろうも 宿はなし
下の紺屋で 宿とって
寝ござはせわしい 夜は長し
暁明けて 空見れば
空のだんでは どうが鳴る
下のだんでは 鐘が鳴る
ねんねんころりや おころりや
(収録日 昭和54年8月9日)
解説
子守歌の中には叙情的なものが多い。この歌などもその代表的なものであろう。絵に描いたような鮮やかな景色とともに物語が展開している。
鳥取市福部町湯山にこの後半部が独立したのがあった。
子ども衆 子ども衆
花折りに行かしゃんか 何花折りに
地蔵の前の 桜の花折りに
一枝折りゃ パッと散る
二枝折りゃ パッと散る
三枝目にゃ 日が暮れて
新し小屋に 泊まろうか
古い小屋に 泊まろうか
新し小屋に 灯が見えて
新し小屋に 泊まって
筵(むしろ)は端かし 夜は長し
朝疾(と)う起きて 空見れば
黄金の杯(さかずき) 手に据(す)えて
一杯飲みゃ じょうごの
二杯飲みゃ じょうごの
三杯目にゃ 肴がのうて参れんか
おれらの方の肴はウグイ三つ アイ三つ
しょぼしょぼ川のフナ三つ
(浜戸こよさん・明治39年生)
両者を比べてみると、細かいところでは微妙に違ってはいる。しかし、同類であることにはどなたも異論はないと思う。
たまたま一七〇四年(宝暦元年)ごろ成ったと推定される因幡藩の野間義学著『筆のかす』に次の類歌があった。
おじゃれ子どもたち 花をりまいろ
花はどこ花 地蔵のまへの 桜花々々
一枝折れば パッと散る
二枝折れば パッと散る
三枝の坂から 日がくれて
あんなのこうやに宿借ろか
こんなのこうやに宿借ろか
蓆(むしろ)ははしかし夜はながし
あかつき起きてそと見れば
児(ちんご)のやうな 傾城(けいせい)が
黄金(きん)の盃(さかずき) 手にすえて
黄金の木履(ぼくり)を はきつめて
黄金のぼくとうつきつめて
一ぱいまゐれ 上戸(じょうご)殿
二はいまゐれ 上戸殿
三ばいめの 肴(さかな)には
肴が無うて まゐらぬか
われ等がちやうの 肴には
ひめうり(姫瓜)こうり(小瓜)
あこだうり(阿古陀瓜)
あこだにまいた(巻いた)
かう(香)の物
この仲間もまた古い歴史を持つものなのである。