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キツネの変化玉

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おはなし

語り手 隠岐郡海士町 浜谷 包房さん(昭和3年生まれ)

キツネのかたき討ち 昔、ある村に大きな杉の木があり、木の根かたを川がちょろちょろ流れております。その木はとても大きく枝は向こうの山へ届いておりましたと。
 その枝を伝って毎晩のように悪賢いキツネがやって来て、下を通る村の人をさんざん化かして困らせました。ある人は重い荷物を持ってそこへ来ますと、キツネがちゃんと牛に化けておりまして、
「これに積んで、牛に背負わせなさい」と言うので、そうしますと、荷物はすっかりキツネに持って行かれてしまったというような調子です。それで村の人はお寺の和尚さんにキツネを退治する方法を相談しました。
「あのキツネを退治する方法はないだろうか」
「よしよし、そんなら、わたしが一つ、悪キツネを懲らしめてやろう」
 和尚さんは、小さい船を作り、杉の木のそばの小川の草むらへ隠しておきました。そして丸い手まりほどの石を捜し、それに岸辺でさんざん泥を塗りたくりました。
−もうキツネが出そうなものだが−と思っていますと、例のキツネがザワザワと葉の音をさせながら杉の木から降りてきて聞きました。
「和尚さん、何をしてござる」
「これは変化(へんげ)玉といってな、わたしの寺では先祖代々大事にしとった玉だ。このごろこれを盗もうという話が伝わったので、わしゃわざっと、この川で汚(よご)らけて持っていなあと思っとる」
「和尚さん、わしの変化玉は七変化だが、おまえのはなんぼだ」
「わしのは八変化だ」
「はてな、本当に八つも変化(へんげ)られっだらあか。そんなら変化やっこをしてみようだないか」
 和尚さんは言いました。
「よし、おまえから先にしてみい」
「おお、何に化けっだ」
「まずはめでたい七福神に化けよ」
「よしきた」。キツネが宙返りを一つしますと、恵比寿さん、大黒さん、布袋さんと出て、最後に美しい弁天さんになりました。和尚さんは、
「そっで、おまえ、種切れか」
「そら、七変化で後はあれせん」
「わしのはもう一つ、七福神の乗る船に化けられる」。和尚さんが糸で縛って船を隠しておいた草むらにその石を投げて、引っ張っりますと船がぞろぞろ出てきました。
 さあ、キツネがそれを見て変化玉がほしくてならなくなったげな。
「なんと和尚さん、頼みがあっだいど。その玉とわれが玉と替えてもらわれんだらか」
「いや、バカなことを言うな。代々の和尚さんが大事にしていたこれはやられの」
「そこを何とか、ごさんだらあか」
「おまえ、寺の宝がなあなってだめだ」
「われが今まで溜めた金(かね)と宝を全部つけってやっけん」
−よしよし、ここで一つ替えてやろう−。こう思った和尚さんは言いました。
「そんなら、交換してやる」
 そこで手に手を取り合って交換したとたん、和尚さんはキツネからもらった玉を石に投げつけ、粉々にしてしまいました。そして、金と宝は袋に入れて持ち帰ろうとしますと、キツネは、
「和尚よ。おまえがなんぼ持って行こうとしても、わしがちょっと化けてそれを取り上げてみせる」と言います。
「それなら取ってみい」。和尚さんが答えますとキツネは、
大蛇 だいじゃ になれ」とやってみましたけど、何にも変わることはできません。それでキツネはとうとう泣き泣き山へ帰って行ったということです。


解説

 昭和51年5月25日に話していただいたものである。浜谷さんは当時45歳の壮年だった。地元出身の国家公務員。仕事とか、地元の歴史などに関心が強く、ノートにいろいろと記録されていた。語り方は豪放磊落で、しかもきめの細かい堅実な語りだった。なお、キツネの七変化玉の昔話はいろいろとあるが、浜谷さんの語られた話は、他ではあまり聞かれない。
 ところで、隠岐は、島前(どうぜん)、島後(どうご)に分かれる。内容的には本土と基本的には同様だが、この昔話はともかく、世間話ではネコが人を化かす話が多い特徴を持っている。だから、本土での「キツネに化かされた話」の代わりに「ネコに化かされた話」が存在しているが、そのようなところに地域性がみられるのである。


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