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語り手の片桐利喜さんは、明治30年10月20日に大山町で生まれておられる。これは筆者が昭和61年8月4日にお宅にうかがい聞かせていただいた、おなじみの「鶴の恩返し」の伯耆型の昔話である。そしてこれは親切で欲のない老夫婦の善意が、思いがけなくも幸運を呼び込むという結果を招くことになる話である。ところで、片桐さんの話には地方色が豊かに示されていることが分かる。
最初に鶴を助ける主人公が、多くの話では若者であるのに対して、大山町の方ではじいさんである。そして、このじいさんは独り者ではなく、れっきとした妻(ばあさん)がいる。そして二人とも善意あふれた好人物である。また、恩返しに来た鶴も女房になるのではなく、娘のままである。そして、鶴が去るきっかけも二人が部屋をのぞいたためという強い理由は語られていない。
また、じいさんが出来上がった木綿を淀江の木綿買いのところへ持って行ったら、木綿買いは「こらとてもわが手に合わぬ。買われぬ。こげな高いものはよう買わんけん、松江の殿さんとこに持って行きてみい。ええ値段で買ってもらわれえけん」と松江の殿さんを紹介し、その結果、じいさんはたくさんなお金をもらい、老夫婦二人が休んでいても食べられるような生活が保障されるのである。
このような特色が見られるが、特に松江の殿さんの登場している点など、実に個性的である。
この部分などは、昔の伯耆国と出雲国との隣国が、親密であった関係を暗に示しているように思える。また淀江についても、当地の中心的な地域であったことがうかがえるのではあるまいか。また、片桐さんの語り口もとても温かくて味わい深く、このような話に適した雰囲気で語っておられるのである。 |