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三人の山子

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おはなし

語り手 島根県仁多郡奥出雲町竹崎 田和 朝子さん(明治40年生)

  昔あったげな。
  あるところに山子が三人おって、毎朝、旦那さんの家の門を通るとき、一番初めの豊吉という山子は、
「ああ、おら、旦那さんの食わっしゃるような膳で、旦那さんの食わっしゃるようなご馳走を食うてみりゃいいと思う」と言う。次の格という山子は、
「おら、お式膳に白金いっぱいもらやあええと思う」と言う。三人目の元という者は、
「おら、ここの嬢さんの婿になりゃええと思う」と言う。
  そのうち旦那さんがそれを聞いて尋ねられたげな。
「豊吉、格、元、わりゃ三人、毎朝、家の門を通りさいすりゃ、なんだいかんだい言うておるが、何言うて通りゃ。まず豊吉、わりゃ何て言うて通った」
「へえ」
「へえじゃ分からん。言いてみい」
「いや、他じゃございませんが、旦那さんの食わっしゃるような膳で、旦那さんの食わっしゃるようなご馳走を食うてみりゃいいになあ、と言いましてございます」
  それから、旦那さんはすぐ女中さんに、
「はや、わしが膳にわしがいつも食うようなご馳走を、この豊吉に食わせてやれ」。 そこで女中がそうしてやると、旦那さんは今度は番頭さんに、
「格には式膳に白金をいっぱいやってごせ」と言ってそうしてやりました。最後に元に向かって、
「元、わりゃどげ言いて通って」といくら聞かれても、「へえ」としか言わんげで、他の二人が銭をもらったり、ご馳走をよばれたりしてしまっても、叱られると思って言わんげで、旦那さんは、
「何だい、言いてみい。他の者はみんな言ったのに、おまえ一人言わんがな。言われんことはないけん言え」あまり言われるので、元も「おら、嬢さんの婿になってみればいい、と言いましてございます」と言いました。すると旦那さんは、
「はあ、そげか。ほんならここへ、いま嬢がいい着物を着て出て和歌(うた)を詠むけん、それを詠み返してみい」と言われました。 それで待っていたら、いい着物を着て簪(かんざし)挿して、嬢さんが出られ、
「天より高いところに咲く花は」と言われたので、
「落ちれば谷のムクゲ(木槿)となる」と元は答えました。旦那さんは喜んで、「ああ、こうこそ、うちの婿だ」言われて、元は望み通りにそこの婿になりました。
  それで、同じ望みを持つのなら大きな望みを持つものだと。こっぽし。


解説

 昭和47年5月にうかがった話である。何気ない話でありながら、最後の部分のオチ「同じ望みを持つのなら大きな望みを持つものだと。」から、この話の持つ教訓が分かる。なお、お嬢さんと山子の掛け合いの詞章であるが、字余りではあるが合わせれば短歌になる仕組みになっている。
つまり、「天より高いところに咲く花は 落ちれば谷のムクゲ(木槿)となる」であり、修正すれば「天より高く咲く花も 落ちれば谷のムクゲかな」くらいだろうか。
  いずれにしてもわたしたちの祖先は、まるでイソップ寓話のように、このようなやさしい話の中へも、愛すべき子孫に期待をこめてちゃんと守るべき道を示してくれているのである。


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