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若返りの水

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おはなし

語り手 島根県隠岐郡知夫村 小泉 ハナさん(明治23年生)

  とんと昔があったげな。
  じいさんとばあさんとあったげな。
  じいさんが正月の若水を迎えに行こうと思ったげな。
「弁当ごせ」
「ご飯がないから梅干し持ってけ」
「梅干しばっかりで食われっかの」
「ええ、梅干しなめて水飲みゃ、それで腹がはっだけ、いいだけん」
  それから、じいさんがぶつぶつ言いながら山へ行ったところが、石の間からいい水がちょろちょろ出ているので、
−いい水だけん−と思って、梅干しなめては水飲み、梅干しなめては水飲みしたら、つい若くなってしまって、少しは心もしっかりしたげな。
−こいでやめましょ。まあ、こがぁ若ぁなったらばばに叱ら れる−と思ってね、それで帰ったげな。
「ばあさんよ、戻ったわい」
「どこの野碌(どいつ)だ。私(だ)をばかにして」
「ばあさん、ばあさん、じいだわ、じいだわ、ばあさん、ようと見い。これは主(のし=おまえ)がげた(くれた)着物や前掛けを掛けとっだぞ」
「本当に、ようと見たらじいさんださあだわ。おまえが若いっとっだけん(若返っているから)、そう言ったわ」
「ばかが。こがこがこがこが(こうこうこう)でな。山の石の間から、いい水が出て、正月さんの葉(譲り葉)もそこにたくさんあるし、そいで主もそこに行きて水飲みゃ若ぁなるけん」
「こなじいさん、そんなら、私も行く」。
  それからばあさんが喜んで、
「われにも何っぞ入れてごせ」と言ったら、
「おまえには、今度は味噌で過ぎとっで」と言って、じいさんは味噌ばっかり入れてやったげな。
  ばあさんが行ったところが、ちょろちょろ水の出るところへ着いて、
−やれ、ここにまあ、こげにいい水が出たことよなあ−と思って、味噌なめては水飲み、なめては水飲みしたところが、それで止めればよかったのに、ばあさんは欲張りだったので、いやになるほど飲んで赤児になってしまって、水のほとりで、
「オワン、オワン………」と泣いていたげな。
  それから、じいさんはばあさんがいつまでも帰って来ないので、
−まあ、あの畜生が、いつまでも何しちょっだ。もどって来
  んだが−と思って、迎えに行ったところが、そこで「オワン、オワン」と泣いているので、じいさんは自分の懐に入れて、
「これがわしのカカッ児(かかり児)だ」と言いながら抱えて帰ったげな。
  昔はむっくら禿げたげな。コケラはポンポン飛んだげな。


解説

 昭和50年6月にうかがった話である。この話の戸籍を関敬吾博士の『日本昔話大成』を引用して紹介してみる。それは「本格昔話の新話型」として次のように登録されている。

本格新一二 若返り水

 1、爺(婆)が(a)泉の水(桃の汁)を飲んで、(b)神に祈願して若返る札をもらう。2、婆が若返ろうとして水をのむ、または(b)札をのむ。3、爺が探しに行くと、水(札)をのみすぎて赤子になっている。

主人公は若返りに成功するが、それを知った配偶者の方は、欲張ったために水などを飲み過ぎ、赤ん坊になってしまうという失敗をしてしまう。こうして見てみれば、この話はいわゆる隣の家の人が主人公を真似て失敗してしまうという「隣人型」の変形であるということが分かる。

  ところで、この「館長の部屋」での昔話は、今月で終了し、来月からは本館で製作し販売している『島根のわらべ歌CD』の元歌を紹介することにしたい。CDでは県 立松江東高校合唱部、松江市立城北小学校児童、松江市立大庭幼稚園園児によってうたわれたものが入っているが、元歌は収録していないので、次回からそれを紹介することにする。ご期待いただきたい。


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