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竜宮の鼻たれ小僧

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おはなし

伝承者 大原 寿美子さん 明治40年(1907年)生

 昔あるときになあ、おじいさんとおばあさんと、貧しくて難儀して暮らしよったのだそうな。
 そうしていたけれど、まあ、何して食べようもなくて、お花を取ってきて、それを売りに出ていたけれども、お花がいくつになっても売れないときには、智頭の慈善橋みたいなところから、川の中へ向かって、
「竜宮の乙姫様に進(へん)じましょう」と言って投げ入れていたのだそうな。そのうちに、本節季(大晦日)になるし、おじいさんは、
「今日は、お花採ってきたりして、おばあ、またお花を売りい出てくるわいや」と言って出たところが、ちっとも売れないので、それからいつものように、
「お花ぁ、竜宮の乙姫様に進(へん)ぜましょう」と言って川に投げ入れたそうな。そしたら花はずっと流れていったかと思っていたら、渦巻の中へ巻き込まれたように見えて、そのまま川の底へ沈んでしまったそうな。家へ帰ったおじいさんはおばあさんに、
「ずっとまあ、花は売れりゃあせず、まあ、乙姫様に投げちょいてもどったわや。あげちょいてもどった」と言ったそうな。
 それから、その晩に、なんとやせこけた情けなげな娘が訪ねてきて、
「今日はおじいさん、竜宮城にはお花がのうて門松がのうて困っておったとこへ、ええお花もろうて、ほんにありがとうございました。」言い、それから、
「おじいさんを竜宮にちょっと連れのうて来い、いうことで迎えにきたけえ」と言うものだから、
「そんならまあ、何じゃけえな。ついて行こうかな」とおじいさんは言って、それから、その悲しそうな娘について行って海へ出たら、大きな亀がおって、そがして、
「おじいさん、うらが(自分の)背なへ乗れ」と言う。それでおじいさんが、その亀の背なに乗ると、今度は亀が、
「目をつぶっとりんさえ。つい、そこだけえ」と言うので、おじいさんが目をつぶっていたら、すぐ竜宮へ着いたそうな。
 そして、竜宮に行ってみれば、あれこれご馳走してくれる。おじいさんはいろいろなあもてなされたそうな。そうしたらその娘が言うことにゃ、
「おじいさん、乙姫さんが『何かやる』と言われても、『何だりいらんけに、鼻たれ小僧がほしい』て言んさいや」と言うものだから、そこで、
「何を土産にしような」と乙姫様が言われたらおじいさんは、
「いんや、何もいらんけど、鼻たれ小僧がほしい」と言ったそうな。乙姫様は、
「そんならやる」と言って、本当に鼻たれ小僧さんをくださったそうな。それは鼻を出していて、汚い汚い小さい小僧さんだそうな。それから、おじいさんは鼻たれ小僧さんを連れて帰ったそうな。この鼻たれ小僧さんには米がなくなれば、
「鼻たれ小僧さん、米がほしい」と頼めば、米をいくらでも出してくれるそうな。また、
「酒が何ぼう、酒何ぼう」と言えば酒も出してくれる。肴も小僧さんに頼めば、何ぼでも聞いてくれる。
「お金がほしい」と言えば、お金もざらざら出してくれるのだそうな。
 そうやっていたところが、実際、次々暮し向きがによくなって、おじいさんとおばあさんの家は、長者のような身上になったしする。それで小屋のような家ではいけないのから、それから鼻たれ小僧さんに、
「りっぱな家がほしい」と言ったら、りっぱな家ができて、おじいさんとおばあさんは下男や下女も使うほど分限者になったそうな。で、そうして、二人は暮らしていったそうな。
 それで暮らしておればよかったものの、二人はいくらでもいくらでも欲ばりだったし、またどこへ行くにも、その鼻たれ小僧さんがずっとつき回っているものだから、とてもうるさくなってしまったそうな。そしたら、あるときおばあさんが、鼻たれ小僧さんに、、
「長者みたような家の旦那が、おまえみたいな者ぁ、いつも連れ回ら、ほんに汚のうてこたえん。『鼻ぁ取れ』言うたって取りゃあせん、『面(つら)ぁ拭けぇ』言うたって、拭きゃあせんし、ほんにどがあにもいやなことじゃ。はや、連れ回れんけん」と言って、そして、
「もう、どこへなと行ってしまえ」と言ったら、
「ほんなら、どこへなと行く」と言って、その鼻たれ小僧さんが出たのだそうな。そしたらまあ、ずんずんずんずんずんずん暮らしが、難儀になっていった。それから、その家も元の小屋になってしまったのだそうな。そればっちり。


解説

 この話は昭和55年11月に大原さんのお宅で聞かせていただいた。信仰心の篤いおじいさんが、竜宮界へ花を差し上げていた心がけを愛でた乙姫さんに、竜宮に招待され、使者である娘の助言を守って呪宝の鼻たれ小僧さんを手に入れる。しかし、折角の幸運も慢心のため、なくしてしまう話である。背後には慢心を戒める人生訓がそれとなく配置されている。
 これは「竜宮童子」と呼ばれている話種に属しており、関敬吾博士の『日本昔話大成』によれば、本格昔話の「11 異郷」のところに次のように登録されている。

 223 竜宮童子(AT555)

 1、貧乏な男(女)が(a)海に門松を捨てる。または(b)魚(鮭)を助ける。亀(女)に迎えられ海底に行く。2、男は(使者に示唆されて)小僧(白犬・黒猫・亀・馬)または宝物(聴耳・打ち出の小槌)を姫からもらって帰る。3、小僧は(一定量の食物を食わせると同量の)黄金をうむ。4、(a)女房(兄、弟、隣人)が借り、多くの黄金を出そうとして、(b)男が慢心をして失敗し、もとの貧乏になる。

 大原さんの話もこれと同類なのである。


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