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田の久兵衛

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おはなし

伝承者 鳥取県米子市今在家 松原あきさん・大正12年生

やっぱり戸上の藤内さんの話になりますが、あの戸上の道を通っておったら、狐はだいたい女に化けて出ることが多いですねえ。女の姿でカランカランカランカランと高下駄を履いて出て来るのだそうです。
 それで、−ああこれは狸だ(狐の言い間違い)−と思ったら、もうー化かされやへんだらかーと思って、一生懸命、身体が震えてしかたがありません。そうしたら、
「おまえは何てえもんだか」と向こうから言われたので、
「た… の…」……田之久兵衛と言おうかと思って、
「きゅう…」と言ったら、
「ああ、おまえは狸か。よう化けてるなあ。おれと化かしあいの競争をしようじゃないか。明日の今ごろここで会おう」と言う。そこで、
「うん」てて、約束して、そいから、別れるときに、
「あんたの一番嫌いなものは何ですか」と田之久兵衛が聞いたら、狐は、
「わしは人間が持っているタバコの吸いがら。あれが一番嫌いだ」と答える。それから、今度は狐が田之久兵衛に向かって、
「ほんなら、おまえは何が嫌いか」と聞いたから、
「わしは人間が持っている小判が一番嫌いじゃ」てって言ったんだそうな。
 そうして別れて、帰ったらみんなに、
「今日は化かしやいするんじゃと。で、あそこに狐が必ず出てくるから、一番嫌いだてっていうタバコの吸いがらを集めて持って出よう」ということになって、みんながタバコの吸いがらを集めて、そして、鍬などいろいろ武器を持って行ったそうな、その場へ。やがて狐がやって来たそうな。
「出てきたぞ。あれだぞ」と見ていると、やっぱり女になって出てきたから、そのタバコの吸いがらを狐の化けた女に向かってボンボンボンボン投げたですって。
 そうしたたら狐は、
「おまえは約束を違えたじゃないか。今に思い知れ」と、がいに怒って逃げて行ったそうな。
そうしたら、今度は二、三日してから、田之久兵衛の家に外からトントンと戸をたたくものがあって、
−あらぁ、あの狐が仕返しに来たぞ−と思って田之久兵衛は戸を開けなかったそうですよ。
 そうしたら、狐は外からトントントントンたたいて窓を開けて、そこから小判を投げ込んだそうです。それで田之久兵衛は一躍、分限者になったっていう話です。


解説

 語り手は松原あきさん(大正12年生)である。平成7年7月にうかがった。松原さんによれば祖父から聞かされたとのことである。しかし、これも他地方では昔話として語られる場合が多い。また、固有名詞を持って語られる場合も時としては認められる。当地では戸上山にある藤内稲荷のご神体である藤内狐として親しまれた狐のエピソードの一つとして語られている。
 関敬吾博士の『日本昔話大成』によって、基本的なスタイルを見ることにする。それは「笑話」の「2 誇張譚」のところに出ているが、2種類が関連していると思われるので両者とも挙げておく。

 471 何が怖い(cf. AT566、1002)

 1、博打うち(怠け者・彦市・吉五)が天狗を欺いて、(a)さいころ(穴開銭・笊)と宝物(扇・宝瓢・隠れ蓑笠)と交換する。または(b)天狗(化け物・茸の化け物・蛇・狐・貧乏神・猫)にあい、その恐れるもの(薮・鉄砲・煙草の脂・火・白水・犬・味噌汁・茄子・塩水・松脂)を知り、これで退治または苦しめる。2、天狗は博打うちのいやなもの(金・大判小判・米・牡丹餅・饅頭・小豆餅)を投げつけて復讐する。3、博打うちはそのために金持ちになる。

 473 田之久

 1、旅役者が峠の洞穴に泊まっていると、化け物(大蛇・蟒・白蛇・狐・狸)が来る。2、名は田之久というと、化け物は狸と聞きちがえて、人ならのむが狸ならのまぬという。(面をかぶって踊って見せる)。3、化け物は煙草(柿渋・松脂・酒・芥子)を恐れる。4、彼は村人と相談して煙草で退治する。5、化け物は田之久のきらいな金を投げつけて復讐する。

このようにした他の地方では、一般的な昔話として語られているものが、米子市では固有名詞を持った藤内狐のエピソードとされているのである


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