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アマンジャクと兄弟

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おはなし

伝承者 島根県隠岐郡隠岐の島町郡 塩山コフエさん・明治42年生

 お父さんが死んでしまって、お母さんと子どもが四人が住んでいたって。子どもを育てるため、お母さんはいつも人のところに働きに行って、子どもたちに食べさせていたと。
「いい子しちょれよ。お母さん、お金もうけて来てやっから」と言って出かけて行き、上の子どもが下の子どもにものを与えたりしてしていたと。
ある晩。お母さんは隣村に働きに行き、握り飯を四つもらった。待っている子どものために土産にしようと思って、喜んで急いで帰りかけたら、その帰り道でアマンジャクが出てきて、
「かか、かか、焼き飯ごせ」と言う。
「いやいや、これはのう、待ちよる子どもにやらにゃならんけ、ごされぬ」
「そいなら、取って噛むぞ」。
しかたがないから、一つポ−ンと投げてやって、それで急いで帰っていると、アマンジャクはもらった握り飯を食べてしまって、また来たという。
「かか、かか、焼き飯ごせ」。
「これはもう、子どもにやらにゃならん、ごされんから」
「そいなら、取って噛むぞ」。
また、一つポ−ンと投げてやった。そして四つまでみんなやってしまった。お母さんはしかたがないので、急いで走って帰っていたらアマンジャクがまた出てきて、
「かか、かか、焼き飯ごせ」。
「もう、みんな、おまえにやってしまって、もう、やるものはない」
「そいなら、取って噛むぞ」。もう何を言われてもやるものは何もないので、一生懸命に急いで走って帰って行ったけれど、アマンジャクはとうとうそのお母さんを捕まえて、引き裂いて食べてしまったって。
 アマンジャクはそのお母さんに化け、子どもたちのところへやって来た。そして、
「お母さんが帰ったぞ」と言った。
「ああ、お母さんが帰った」と二つか三つの小さい子は喜んで飛びついて行く。しかし、大きな子はどうもお母さんとは違うようなのに気づいて、
「行くな、行くな」と言うけれども、小さい子どもは訳が分からないので、やはりお母さんに飛びついて行ったと。お母さんは、
「寝よう」と言うので、それでみんな寝たのだって。
その夜中にぼりっぼりっと音がするので、何の音がするのだろうかと次の小さい子どもが、
「お母さん、何食べちょう」と聞いた。
「こらはなあ、うちのそらの干し大根だ」と言ってごまかしたけれど、本当は一番小さい子どもを寝ながら食べてしまったのだって。
それからそのことに気づいた一番大きな子どもが、それでも二人を連れて家の裏にある井戸の側の榊の木に登っていったって。そして二人に、
「あれはアマンジャクだけな。お母さんじゃないけん」と教えてやったと。
そうしたら朝になった。アマンジャクは子どもたちが見えないので、あわてて捜しに出て来た。
「子どもら、どこへ行きた。子どもら、子どもら」と言っているが、子どもたちは、
「だまっちょれ、だまっちょれ」と返事をしなかった。そのうちアマンジャクは、
「井戸の中へ落ちりゃせんかいな」と井戸の側へやって来て、その中をのぞいて見たら、井戸の中に子どもたちが映っていたので、アマンジャクは、
「あ、こりゃ井戸の中に落ちとる。よし、タモ持ってきてすくっちゃれ」と大きなタモを持って来てすくうのだそうな。けれどもいくらすくっても子どもがすくえるはずはない。その格好がおかしいので、笑いが出そうになったって。子どもたちはお互いに、
「笑うな、笑うな」と言いあっていたけれども、とうとう一人がこらえきれなくなって、
「くっくっ」と声を出したって。その声で上にいることが分かったアマンジャクは、
「おまえら、そこにおっかな。はやはや、どうして上がった」と聞く。
「うん、あんな、木の蜜つけて上がったわの」と言うと、
「木の蜜つけて上がったか。うん分かった」。アマンジャクは自分もその榊の木に登ろうと思って、油を取ってきて木につけて登りかけたが滑って登れないので、
「滑ってあがれん。どうして上がった」とまた聞いたって。
「う−ん、木の蜜に牛の糞つけて上がったわの」と言うと、アマンジャクはそうして上がろうとしたって。油をつけてまた牛の糞をつけるとずるずるして滑って、とうとう井戸の中へ落ちてしまったって。
それから子どもたちは喜んで木から下りて来たら、井戸の中からアマンジャクが大きな蜘蛛に化けてごそごそ出て来たので、
「親のかたきだ。オトチコセ−チコ」と言いながらたたき殺したって。
 それで、「夜の蜘蛛は親に似ていても殺せ」と言うそうです。


解説

 語り手は塩山コフエさん(明治42年生)。昭和54年(1979)年8月にうかがった。これは関敬吾博士の『日本昔話大成』の分類では「本格昔話」の「逃竄譚(とうざんたん)」に属し、その中の「天道さんの鎖」として位置づけられている。その部分をそのまま抜き出してみよう。

 1、母親が仕事に行って途中で山姥 (鬼・鬼婆・狼・虎)に食われる。山 姥は母親に化けてきて、兄妹らを欺い て入る。2、山姥の母は末子を食う。 兄弟が欲しがると指を切ってやる。3、 兄妹は山姥だと知って逃げ、池の端の 木に登る。山姥は池の兄妹の影を見て 笊(ざる)ですくう。4、山姥が追い かけてきて木に登る。兄妹は天から金 の綱を下ろしてもらって天に上る。山 姥がまねると腐れ綱。上る途中で切れ て死ぬ。兄妹は太陽と月になる。

 隠岐の島町の話村の方はアマンジャクが登場しているが、関敬吾博士のオ−ソドックスな話の方としては山姥とか鬼、鬼婆、狼、虎となっている。しかし、人間の方から好まれない存在として眺めた場合は、どちらも同じようなものであろう。一番大きく違っているのは、最後のところで、関敬吾博士の方では天から金の綱を下ろしてもらって、兄妹は天に上り太陽と月になるのであるが、隠岐の島町ではただアマンジャクが井戸に落ちて死ぬばかりで、兄弟が天に上って云々の部分はない。その代わり、「オトチコセ−チコ」と唱えながら、アマンジャクの化けた蜘蛛をたたき殺し、「夜出る蜘蛛は親に似ていても殺さなければならぬ」と言われている由来譚として語られている。
ところで、このアマンジャクは、常に人の反対ばかりをするものの例えとして使われているが、元来は『古事記』上巻の出雲神話「国譲り」のところで、天の鳴女が下界へ来て天若日子(あめのわかひこ)に天つ神の言葉を伝えようとしたおり、その悪口を述べる天探女(あまのさぐめ)に祖型が求められる。この隠岐の島町では、伝承の変化が大きく、妖怪も他地区での山姥などから、このアマンジャクにいつの間にか入れ替わってしまったのではないかと考えられるのである。


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