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姉は鬼

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おはなし

語り手 飯石郡飯南町角井 中原ワイさん・大正10 年(1910 年)生

 なんと昔があったげな。
 昔、お父さんとお母さんと、それから姉さんと弟が住んでいたげな。そうしたらお父さんとお母さんはそのうち死んでしまわれたげな。
 それで、姉弟二人で大きくなっていったげな。ところが、姉さんが毎日、夜になったら、
「ついて来うでないよ」と言って、決まったように出て行くので、弟はいつも、
-何するだろう-と思って不思議な気がしていたけれど、
-何でも今晩はついていって見ちゃるが-
 弟は、姉さんの後をついて行ったら、何と姉さんは山の中へ入って、墓の方へ行くので、こわいことだと思って追って行ったら、姉さんは、その日に死んだ人をひっぱり出して、それから、角の生えた恐ろしい鬼の顔になって、その死人をがりがりがりがりおいしそうに食べ出したげな。
 で、弟は恐ろしくて恐ろしくてとんで帰ったげな。
 またあくる晩も、姉さんが出て行くので、弟は恐ろしくはあったけれど、ついて行ってみたら、また夕べのとうりに、死人を出してごりごり食べる。弟はそのあくる晩もまたついて行ったいうて。そうしたら、ちょっと近くにおったでその棺の蓋ぁ取ったのが当たったいって。
「痛い!」と弟が言ったげな。そしたら、姉さんが、
「われ見るな、言うたのに見とったかい。よし、おまえもいっしょに食っちゃる」と言って追いかけてきたので、いや、恐ろしくて恐ろしくて弟はとんで逃げたげな。
 それから、その家は恐ろしくて鬼の姉さんのところへは帰られないので、弟はそれからどこか旅に出たのだげな。
 年かして弟は、姉さんが元気でいるものかどうかと思って家へ帰ってみたら、姉さんは鏡を立てて、ビンつけをつけて髪結っていた。それでまあ、
「元気だったか」言って、少し話をしていたげな。そしたら二匹の白鼠が出て、弟のワラジの紐を一生懸命ひっぱるいって。
「早う出て行け、出て行け」言ってひっぱるので、それが死んだお父さんとお母さんだったかも知れない。
 それで弟も、とうとう恐ろしくなって、とんで出たら、
「われ待て、食べちゃるけえ」と言って、また姉さんがものすごい顔して、鬼になって追いかけたいって。で、弟は恐ろしくて恐ろしくてどこまでもとんで行ったいって。まあ、これでこっぽしだ。


解説

 関敬吾『日本昔話大成』の本格昔話「逃竄譚」の中の「妹は鬼」の話型で登録されている。主に九州で収録されている話である。わたしにとってこれまでに他では同類収録できないものであった。そこで中原さんにお願いすると、「子どものころ、祖母から聞いたものです」と言われながら、懐かしそうに語ってくださっったものである。この話は、その後、弟がどうなったかまでは語られていない。後は聞き手の想像に任せられている。何とも不思議な話なのである。



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