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床山の池の蛇婿

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おはなし

語り手 隠岐郡隠岐の島町山田  吉山秋男さん・大正元年(1912年)生

 一宮(いっくう)の屋号は忌部いうてね、そこのお嬢さんが中村へ遊びに行って、床山の池のほとりに行って、にわかに夕立で、小屋に入ったら美青年が本を読んでおった。
 そこで、あまり言葉も交わさんこに、夕立も晴れたし、中村へ行ってね、一晩か二晩か泊まったらしいですわね。
 また帰り道で、そのときも同じように夕立がきて、またその小屋に入ったらその男もおったらしいですわ。そして、まああまり言葉も交わさんこにそのまんま別れて帰ったそうな。
そしたら、その忌部いうところの水若酢の宮司さんですが、田舎にいえば正面の玄関と中戸口じぁけんね。外来者の入るような縁があっですが、そこんとこに毎朝、草履が濡れたのがあっけど、おかしいなあ、こらおかしいなあ、言って、毎夜毎夜だから、そこの次男が後つけたら床山の方へ行きなる場所だわね、その途中から見失って、どうもおかしい。
そうしたら、こんど娘さんが両親に向かって、
「わたしは床山の池へ行く」言うんだそうな。
「そら、どういうわけだ」と親が聞いたら、娘さんは、
「床山の主に自分は見初められたから、どうしても行かねばいけん」
「や、そりゃいけん」
「だけど、わたしはどうしたって、ここの家におられんから行かしてくれ」。
で、娘さんが言われることに、もう両親もしかたなくなく、
-そんならもういつ去りに行く-ていう日にちも決めたらしいですわ。
 そうしたらね、お嬢さんが、こう鏡に向かって化粧するときに、よそのもんがこう見たら鏡には蛇体が映ってね、それから、出入り、子方、両親とみんな駕篭でついて行って、そいで池のほとりまで行くだけんね。
そいで自然に水の中、ずうーと入って姿が見えなくなって、で、両親の方は、
「せめてもう一回だけ姿を見せてくれ」。
 そうしたら、水面にこう浮き上がったらお嬢さんの正真正銘の姿が現れたらしいですわ。やっぱし親のことだから、このまま沈んだら名残つかんがね。
「もう一度」「もう一度……」言うたらね、
 こんだー(今度)、池の中の水辺に当たって煮えくり返るようになってね、水がめの中から二匹の大きな蛇がぬうーと出て来てね、
 で、それ見て親子の縁が切れたわけだね。そして、ま、家へ帰ったらしいですわね。
で、その池がやっぱし今でも、この地区では七月二十四日に紙で御幣を切って、そこへ持って行って祭るですわ。小さいほこらがありましただけん、
 そういう伝説があっですわ。
(昭和54年8月7日収録)


解説

 本格昔話の「婚姻・異類聟」に属している「蛇聟入・苧環型」が島後地区では昔話の「蛇婿入り」が床山の池と関連づけられ、伝説化しており、当地でこの話はよく知られている。



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