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猫の恩返し(昔話)

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おはなし

語り手 江津市波積町本郷  柳原ヒサコさん・昭和8年(1933年)生

昔々あったげな。一人息子が、
「今もどりましたでな。かあさん、かあさん、何をそんなに怒っとるかな」
「今、この猫が魚を盗ったので、目をつぶしてやろうと思うとる。早うつかまえてくれ。目をつぶしてやる」。かあさんが言うたげな。
息子が、
「そりゃあ、かあさんかわいそうなから今日はこらえてやってくれ」とかんかんに怒っておるかあさんに、息子が断りを言うたげな。
 その日はそれで終わったげな。
 明くる日また仕事に息子が出ていった。仕事が終えて夕方帰ってきて、かわいい猫がいない。「おかあさん。猫はどこにおるかな」と聞いたげな。
「今日は勘弁できん。今日も魚を盗ってしもうた。目をつぶして今日は追い出してやった」とかあさんがかんかんに怒ったげな。
 そいで息子はその猫を捜して旅に出たげな。
 一生懸命山道を歩いて、とっぷり日も暮れてしもうたげな。泊まろうには宿はなし、猫の名前を呼びながら一生懸命、猫の名前を呼びながら歩いていった。遠くに青い寂しそうな灯がぽつんと一軒見えた。
「まあ、あそこで宿を頼もう」
「今晩は。今晩は。旅の者です。一晩泊めてください」と頼んだ。そしたらきれいな娘さんが出てきた。
「どうぞ、何もおかまいはできませんが、どうぞお泊まりくださいませ」て泊めてくれたげな。
 そうするとまもなく、
「今晩は、お母さん、母さん。今夜はこれにはお客さんが見えたそうで」
「おお、おお、よう来た、よう来た。早う上がっててごをしてくれえや」
 また二人目の娘さんが来た。
「お母さん、今晩これにはお客さんがあるそうで」
「おお、おお、よう来た、よう来た。早う上がっててごをしてくれえや」と三人の娘さんが来たそうな。その娘さんは、どれもきれいな娘さんであったそうな。そして旅人は疲れてぐうぐう休んでおったげな。
 そうすると夜中に、何かざわざわ騒がしい音がする。はっと目が覚めてみたら、その娘さんたちが母さんと全部で何かごそごそ話しとる。
「はっ、おかしいなあ」。
すると一人の娘さんが傍に来て、
「旅人、旅人。ここにおってはあなたは食われてしまう。早く目隠しをしてわたしの背中にさばってください」そう言ってそうっと起こしたげな。
「これで目隠しをして、早く私の背(せな)にさばってください」
「おかしいなあ」と思いながら旅人はその娘さんにおんぶしてもらって、ずいぶん歩いたと思われる。
 そうすると娘さんが背中から降ろして、
「わたしはあなたのところで飼ってもらっておったネコマタだが、いろいろお世話になりました。早く逃げてください」と言うて助けてくれたげな。
 ネコマタのお話でした。猫は三日すりゃあ恩を忘れるというが、それは嘘です。というお話でした。
 それぽーっちり。
(平成13年7月31日収録)


解説

 猫が恩返しをする話はかなり珍しい。飼われていた猫が恩返しをする話として有名なものに「猫檀家」があるほか。米子市でもネズミ退治をする猫の話があるくらいである。
 ここでは「猫は三日すりゃあ恩を忘れるというが、それは嘘です」と語られている。また「それぽーっちり」とあるのは、石見地方での昔話の最後を意味する「結句」である。


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