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小僧の化け物退治(昔話)

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おはなし

語り手 仁多郡奥出雲町大呂  村尾 澄子(大正15年生)

 とんと昔があったげな。
 あるお寺に、和尚(おしよう)さんと小僧(こぞう)さんとおったげな。
 それから、その小僧が手に合わん小僧で、和尚さんが修行(しゆぎよう)に出してやろうかと思って、 「修行に出え」て言われたげな。
 それから小僧は仕方がないだけに、荷物をからげて坂をこてこて下(お)りよったげな。そうしたら、 「小僧、小僧。ちょっこう(ちょっと)もどれ。用がああけん」言われたげな。それから小僧は、 -やれ、うれしや。まぁほんに、おらが出ぇだけに、和尚さんのもどいてごさっしゃぁわや-思ってもどりかけたげな。
 もどったげなら、そげしたら、和尚さんは、 「大木の根より小木の根」いって言われたげな。それから、 「もどれぇ」いって言われないから、しかたなしにまた坂をこてこて下りていたら、 「小僧、小僧。ちょっこい用がああけん、またもどれ」言われたげな。それから、 -まあ、こら、ほんに今度ぁもどいてごさっしゃわい-思って、それからもどったら、 「方丈の間(和尚さんの部屋)より次の間、縁の下まで」いって言って、そいから「もどれ」いって言われないので、それからまた仕方なく小僧さんは出たげな。
 それから、まあ、ずっーと歩いて行っていたら、空が曇ってきて、それから大きな雷(かみなり)さんが鳴って雨が降りだいたげな。それから、まあ、小僧は、 -大きな木の下へ入っていたら雨がかからないから-思って大きな木の下へ入って、ちゃぁんとしゃがんでおったげな。
 そうしたら、雷(かみなり)さんのえらいやつが鳴るものだから、和尚さんのほんに「大木の根より小木の根」いって言われたがと思って、それから、そこの大きな根の木の下から、細い木の下へ行ってちゃぁんとこうしてしゃがんでおったげな。
 そうしたら、大きな雷さんが鳴ったと思ったら、いま、小僧さんが休んでいたぶんの木に向けて雷さんがあまったげで(・・・・・・)(落ちたそうで)、そいから、 -ああ、ほんに和尚さんの、あげ言いて聞かしぇてごさっしゃっていいことしたぁ、おら、命拾いしたわ-と思って、それからまた田んぼ道をこてこてこてこて行っていたら、今度は日が暮れるようになったげな。
 それから、まあ、どこで泊まらぁかいと思って、たったも(どんどん)行っていたら、晩になるし、それから、他所の家に行って、 「今夜、泊めてごさっしゃい」いって言ったら、 「うちにはよう泊めんけん、そこの後ろに庵寺(あんでら)があぁけに、あすこへ行って泊まらっしゃい。あそこにゃだれんだいおらんけん」言って。
 それから小僧さんは、 -まあ、嬉しや寝ぇとこさえありゃいいけん-思ってそこへ行って寝ちょったげな。
 そうしたら、晩になって、夜中時分になったら、 「テンテンコヅッつぁん、うちんかね」言って何やら来たげな。それから、 「はぇ、はぇ」言ってアマダ(草葺き小屋の二階)で声がするげな。てんてんてんてん上がるげな。それから、 -あらぁ何だいおじぇえなぁ(恐ろしいなあ)-と思っていたら、また、 「テンテンコヅッつぁん、うちんかね」
「はぇ、はぇ」またてんてんてんてん上がるげな。
-あらぁおじぇえなぁ(恐ろしいなあ)、こりゃぁ、ほんに何がおぉだらか-と思って、うーんと化け物が出たわい、と思って、小僧はちゃぁんと恐ろしくて恐ろしくていけないから、小さくなっていたげな。
 そうしたら、アマダでデレーンデレーン言わしてとび回って遊んでおるげな。それから小僧さんは恐ろしくていけないので、一生懸命になって隠れておったところめあ、やがてのほどに、
「今夜は坊主くさいぞぉおぉ、今夜は坊主(ばあず)くさいぞぉおぉ」いってアマダで言い出したげな。それから小僧さんは恐ろしくていけないので、それからまあ、方丈の間へ入ってちゃぁんと隠れておったげな。そうしたとこめが、今、小僧がおったとこへ向けて、アマダからダラーンダラーンとんで(走って)下りて、そうして捜しだしたげな。
 それから小僧は恐ろしくていけないので、方丈の間で小さくなっていたけれども、ああ、ほんに、方丈さんのああ言われた、 -方丈の間より次の間、縁の下まで-言われたからと思って、それから次の間へ行って、ちゃぁんと隠れていたげなが、また、化け物たちが方丈の間へとんできてからに、 「坊主くさい、坊主くさい」言って捜(さが)すげな。それから小僧はまたおぞんなって(恐ろしくなって)、今度は縁側の下へ入ってちゃぁんと隠れておったげな。
 そうしたところが、化け物たちが方丈の間から出て、次の間へ入ってデレーンデレーン騒動して捜しているうちに夜が明けかけたげな。
 東の方が少し明(あか)くなりかけたげな。そうしたげなら、今まで騒動していた化け物が、
「今日はこぉでしまわぁ。また捜さぁ。おらぁアマダへいんじょうけん」
「はぇえ」そうする一つのやつは、
「おらぁ、庭の垣根の上に上がっちょうけん」それから一つのやつは、
「おらぁ、後ろの竹山へいんで寝ちょうけん」言って帰ったげな。
 それから、そうして大分明(あか)くなって、小僧が、
-ほんに、こんなぁ大分明(あか)んなったが、何の化け物がおったやら-と思って、
-庭の、ほんに垣根の上へいんじょうけんいって言いたけん-と思って、それから、そろっと縁側の下から出て、行って見たところめが、茶壺(ちやつぼ)の化け物が、

 ♪ 千年生けった このチャッチャ茶壺

言って、垣根の上で踊っていたげな。
それから手くそに合わん(手に負えない)くらいの小僧さんだから、
-くそー、こんなが千年生けったいって言いただけん-いって、それから、
「二千年生けぇったこのこっ小僧がー」言って、とんで(走って)行ってスポーンと押したげな。そうしたら、茶壺が落ちてえ、黒血吐いて死んだげな。それから、
-「おらぁ、アマダぃ上がっちょう」いって言いたけん-。それからアマダへ上がって見たら、何にもなかったけれども、大きな椿(つばき)の木でこしらえたカンコ(木の槌)が一つあったげな。それから、
-はーて、テンテンコヅッつぁん言いだけん、このカンコだわい-と思って、上から下へスターンと落としたら、また、それが黒血を吐いて死んだげな。それから、今度、
-「おらぁ、竹山へいんじょうけん」いいて言ったけん、何がおぉやら-と思って竹山へ行ってみたら、鶏の化け物が寝ておったげで、それから、それをたたいて殺して、そうして小僧さんがもどって、ちゃぁんと寝っちょったげな。
そうしたら、村の衆が、
「あの寺は化け物が出ぇけん、かわいそうに夕べは、ほんにあの小僧はあの化け物に噛(か)み殺されたらぁが、さあ、行ってみょう」言って大勢して来たげなら、小僧が化けものを退治して、ちゃぁんとおったげで、それから村の者が喜んで、その小僧さんをそこのお寺の和尚さんにしたげな。
昔こっぽし。

(昭和47年6月21日収録)


解説

 これは関敬吾『日本昔話大成』で調べると、「笑話」の中の「話千両」と「本格昔話」の「愚かな動物」の中にある「化物問答」と」のそれぞれの一部が結合して一つの話になっているものです。

  515 話千両(AT910、910A)

 ある男が旅でかせいだ金で三つの話を買う。(1)の柱のない家に泊まるな(大木の下よりも小木の下・急がば回れ)。落雷・崖崩れ・舟の転覆からのがれる。(2)愛嬌(あいきよう)よいのに油断すな(ふしぎなものに気をつけよ)。殺害からのがれる。(3)短気は損気。(a)女房のところに間男がいるが、殺さずに金をとる。(b)女房が尼になった母(男の人形)と寝ている。殺さずにすむ。

  260 化物問答(AT812)

 旅人が古屋に泊まると、化け物が出てきて謎(なぞ)言葉(北山の白狐・南池の鯉魚(りぎよ)・東谷の三足の馬・西竹林の一足の鶏など)というのをいいあてる。以後、化け物は出なくなる。

 小僧が主人公になっていますが、和尚さんから三つの教訓をもらって修行に出かけ、もらった教訓を生かして難を逃れ、お寺に現れた化け物を退治します。そして村人に乞われて、そのお寺の住職に収まるという話になっています。昔話と「3」の数の関係の強さが、この話にも示されています。
 このように地方によって、独立している別な話が合体して、一つの物語になるのが伝承のおもしろさではないでしょうか。



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