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団子婿(昔話)

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おはなし

語り手 松江市八雲町市場  稲垣カズコさん・明治39年(1909年)生

 とんとん昔があったげな。だらず婿がお呼ばれして行くことになったげな。
 それでこれはまた山の山の奥の方の一軒屋で呼ばれえことになって、それで川には前から橋はなかって、飛石を渡って「一つ、二つ」言って飛石ぴょんこぴょんこ跳んで行きて、そして呼ばれて行くことだけん、たいへんはずんで呼ばれて行きたげな。行きたら、
「よう来てごいたなあ」。で、そこの人も喜ばれたし、自分もうれしてうれしてならんだったげな。
 そしてお膳が出たら、まあ、大きなお椀にお団子がいっぱい入れて、そうから、そこの若いもんのお家(うち)らちゃ、まことに米のシイラてって、お米の一番屑米のこと、そげな団子で、け、手前で食う団子は、け、ように噛んで食ってもこの歯岸から血が出えやな固い団子だったに、なんとまあ、豆の入った、今でいうぜんざいのことですわなあ、そうにまいのが出て、
「まあ、まいこと、まいこと」言ってったら、まあ、ほんに何にも例えられんほどまいご馳走だったげな。
 そうから、
-いんだら忘れんやにあげ言ってかかさんにこっさえてもらわないけんがなあ-と思って、まことに団子のことばっかあ思っておったげな。
 そしたら、いよいよ腹いっぱい呼ばれて、
「まあ、今日はまあ何て言っていい日だったやら、まあ、一番好きな団子のご馳走呼ばれて、こら忘れんやにいんで言わんなんけん」て、ま、そこの家の人に礼の一つも言わならんに、団子のことでけ、もう頭がいっぱいになったやに、
 そうからいよいよ別れて自分のとこへいなんならんに、飛石がけ、いっぱい渡らないなれんとこで、もう晩方ではああし、日も暮れ暮れになあけに急いでいなないけん。やあ、駆けってその飛石をぴょ-んぴょぴょんぴょん渡りよったら、け、団子てことがけ、頭からけ、忘れてしまって、
-やあ、困ったなあ。どげだったかいなあ-て考ええだどもなかなか「団子」てことが言われん。
 そうから、
-ははあ、そうでも、ちとどこだい分かったなあ。一番後で言うことは「ご」がついちょったいだったが、ほ-ん、そげだなあ-
 いろいろ考えたども、どうもしゃんとしたことが分からん。
-ああ、もういわ。ほんな、け、いんでけ、いい加減なこと言ってしまうだわ-と思って、そうから、じんど最後の石渡あときに、ぴょ-んこ跳んだげです。
 大股でぴょ-んこ跳んだ。
 そうから、わが家、もどって、
「今もどったわ」て言ったら、そこのおかかが出て、
「ああ、もどったか。ご馳走があったらがの。何のご馳走になっただや」
「はあ-、あらねえ、”ご”のご馳走になったで」
「”ご”のだけ言ったてて何のことだい、そうが分からんがな。そぎゃん、どぎゃんもんだった」
「いやまあ、こげなやな丸いやなもんだったわ。け、早に言われんがな、あんまあいっぱいご馳走になって、け、腹がいっぱいふくれてけ、早寝てしまわにゃいけんやになった」
「いや、ま、そぎゃんこと言わすとになあ、呼ばれたまなあ、また、みんな話すもんだけん。早、おまえ言やえ」てって、あんま、かかが責めえもんだけん、
「ああ、あげだった。あげだった。ヒョンゴ、ご馳走になった」
「ふ-ん、そらまた変わったことだなあ。ど-げなもんだったかい」
「どげもこげもねえわい。ヒョンゴのご馳走になったが」たあ、かかさんが怒って、け、そこに吹き竹、火吹く吹き竹があったやつ取って、
「こ-んなばかめが、ほんに。だらくそにもほどがああ」てって、
 その吹き竹でけえ、頭をツッカ-ンとこうたたいたげな。そげしたら、
「や-あ、痛かった。こな、かかさん、たいてい知れたもんだがの。言われんってたてて言っちょうにかあに。は-あ、痛かった、痛かった。ま-あ……、あら、まあここに団子みたいな瘤が出たがの、まあ、かかさん、こらあ。ここ見てごっさい」て言った。
「はあ、ほんだったなあ。そ-らまあ団子より大っきな瘤だがなあ」
「あっ、あげだった団子のご馳走だった」てって、だらず婿がそこで初めて分かったということで、こっぽり。
-平成3年(1991)11月16日収録-


解説

 関敬吾博士『日本昔話大成』で見ると笑話の愚人譚の中に「愚か聟」があり、そこに「団子聟」として登録されているのがそれである。



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