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エンコウ婿(昔話)

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おはなし

語り手 浜田市三隅町西河内  山川テルさん・明治25年(1892)生

 昔、あるところにおじいさんとあばあさんと娘が三人おりましたげな。
おじいさんが毎日、田の水を見に行けば、行ったたんびに水の道をはずしてあります。
-だれがいたずらをするのやら-と思いながら、おじいさんが元のように水を当てておけば、エンコウが後からやって来てそれをはずします。
 おじいさんはそれを知って、エンコウに、
「おまやぁのう、家に娘が三人おるけえ、どれでも一人やるけえ、この水をはずしてくれんなや」と言いますと、
「そりゃあ、娘をもらわれりゃ、はずしゃあせんけえ、娘をくれえ」と答えました。
 それから、明くる朝、おじいさんが寝ていて、いくら経っても起きません。それで一番上の娘の方がやって来ました。
「お父さん、お父さん、起きてご飯を食べんさい」
「ご飯を食べようがのう、おまえ、エンコウの嫁さんに行ってくれんかい」
おじいさんはこう言って頼みました。
「だれがそがぁに、ようエンコウの嫁やなんかに行こうかい」
 上の娘はそう言って逃げて行きました。そうしたらまた中の娘がまたやって来て言いましたげな。それも、
「エンコウの女房やなんかに、だれが行こうにゃあ」と言って逃げましたげな。そこで三番目の一番末の妹が行って言いましたげな。
「そりゃあ、お父さんが言いんさることなら、どこへでも行きます」。おじいさんは、
「おお、おお、行ってくれ、すまんが」言って、起きてご飯を食べました。そしてその娘に、
「おまえ、何がええかい。要るものを買うてやるけえ言え」と言います。
 そうしたら、娘は針を千本買ってもらってエンコウの家へ行きましたげな。
 行ってみますと向こうのお母さんには虱(しらみ)がいっぱいおりますげな。それで娘はその虱を取っては、持って行った針に挿し、一つ取っては針に挿しして、とうとう千本の針をみんな使ってしまいました。
 そうするとエンコウのお母さんは、あんまり楽になったので、
「なんでも、いま兄いが出た留守だけえ、いんでくれえ、よう虱を取ってくれてありがたぁ。そいから、この箱をやるけえ、いんで悲しいときにゃあ、この箱を開けて見てくれ」と言って、その箱をくれ、また、猫の皮も娘にやりましたげな。
「もし、息子がもどりよったら早う薮に入って、猫のふりをしてニャンニャン言っておれ」と言いましたげな。
 それから、帰って行く途中、向こうから息子が来たのですけれど、娘はあわててエンコウのお母さんからもらった猫の皮をかぶって、薮へ飛び込んで、ニャンニャン鳴きました。 そうしたら、エンコウの息子は猫がいるかと思って、そのまま通り過ぎてしまいましたげな。
 帰ってみれば、姉さんたちは着物をたくさんたくさん広げて虫干ししておりますげな。
-ようにしもた。わしもあがあなとこへ行かにゃあ、ほんに、 あれほど着物ができたろうが-と思って、悲しくなりましたげな。
 それから、「悲しくなったときに開けてみなさい」ということだったからと、エンコウのお母さんの言葉を思い出して、その箱を開けてみましたげな。そうしたら、姉さんたちのよりもまだまだきれいな着物が、たくさんたくさんありましたげな。
 それから、隣の方へ行って綱を借りてきたりなどして、姉さんたちに負けないように、きれいな着物をたくさん干しましたげな。
 やっぱり、親の言うことを聞く者でないとだめだということです。
(昭和35年1月31日収録)


解説

 わたしがこの研究を始めて最初に訪問させていただいたおりに聴かせていただいた記念すべき話の一つである。コタツに当たりつつ、ネコもそばにいて、小学校低学年である孫の男の子二人も一緒だった。そのときのことがまるで昨日のように、わたしの頭には鮮明な印象で残っている。懐かしい限りである。
 関敬吾『日本昔話大成』の戸籍では「本格昔話」の「婚姻・異類聟」の中にある「河童聟入」に当てはまる。エンコウというのは河童の石見方言である。


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